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認定データマネージャー制度

 

 臨床医学の進歩は、昔はジェンナーの種痘やフレミングによる抗生物質の発見など、大きなbreakthroughがおこることによってもたらされてきました。ワックスマンがストレプトマイシンを開発するまで、古代エジプトの時代から20世紀の中盤までずっと結核は治療法のない死に至る病であり、3,000年以上の間、効果的な治療の進歩は全くありませんでした。近年においても、臨床医学は科学というより経験則の学問であり、多くの患者さんを治療してきた熟練の臨床医の実地での経験をもとに診断法や治療法が決められてきた時代が続いていました。

 20世紀の半ばごろから臨床医学を科学として進めていこうという機運が高まりました。ある仮説を作り、それを臨床試験という方法によって検証することによって、名医の神がかり的な力に頼るのではなく、一歩一歩、よりよい診断や治療を発展させることができるようになったのです。1970年代から80年代にかけてRosenというニューヨークの医師が骨肉腫の患者に対して治療効果を客観的に評価できる第二相の臨床試験をいくつか続けて行って、この癌の予後を劇的に改善することに成功しました。1970年の始めには5年生存率が5%以下だった骨肉腫の現在の5年生存率は60−70%まで改善されています。臨床試験という新しい研究の方法論が開発されることによって、不治の病といわれた癌のうちいくつかが、ほんの50年足らずの間に半数以上の患者さんが治る病気になったのです。

 ただし、この第二相の臨床試験を積み上げるだけでは医学をより早く進歩させるためには不十分だということもだんだん分ってきました。1980年代の中盤からはランダム化をともなう第三相の比較対照試験がより正確、かつ迅速に医学的な真実に到達できる最も優れた方法であることが広く理解されるようになりました。進行大腸癌に対して行われたいくつかの大規模臨床試験によって、古典的な5-FU療法にロイコボリンが併用されて標準治療となり、イリノテカンやオキザリプラチンがさらに治療効果を高め、近年では分子標的薬が登場して進行大腸癌の治療成績は一変しました。1990年代前半には生存期間の中央値は5−6カ月でしたが、現在では2年を超えるまでになっています。つい20年前までは100人進行大腸癌の患者さんがいらした場合、51人目が亡くなるのは診断がついてから5−6カ月だったのが、今では2年以上になっています。

 この急速な臨床試験の進歩を支えたのが大規模臨床試験です。より大きな比較対照試験を行うことによって、より正確かつ迅速に新しい治療法の効果を評価することが可能になりました。オキザリプラチンの評価を確認するために行われたMOSAIC試験やNSABP C-07試験はそれぞれ2,000例以上の規模の試験ですが、必要な患者さんの数を登録するのに2年少ししかかかっていません。現在ではヨーロッパ、アメリカ、日本などの各国が協同で10,000例を越えるIDEAという臨床試験を進めており、大腸癌治療にさらなる新しいエビデンスがつけ加えられるのも間近だと思います。

 医学研究の中心になって、いろいろな病気、特に癌治療の劇的な進歩を担うようになった臨床試験ですが、巨大な規模になり、複雑になってきている現在の臨床試験は医師や看護師だけの手におえるものではなくなってきています。臨床試験、特に大規模な第三相の比較対照試験を運営していくためには、 (1)試験にeligibleな患者さんをできるだけ全員、臨床試験に登録するために、絶えず入院患者や外来患者のeligibilityをチェックして、担当医が、適応症例を見逃すことなく、施設が参加している臨床研究にentryできるようにすることを担保する。 (2)登録された症例に対する適切な投薬、毒性の検査、また必要な画像診断などが滞りなく行われているかについて常に気を配り、担当医師に助言を行う。 (3)薬剤のコンプライアンスについての情報の把握、毒性の発現に対する減量、休薬基準についての充分な理解をもとに担当医に協力して、臨床試験が欠損データの発生を最小限に抑えつつ完遂されるよう注意を払う。 (4)必要症例登録後も患者の転院その他の理由によるlost to follow upなどを最小限にして、質の高い臨床試験のレベルを保つよう留意する。 (5)登録施設でチェックすべきデータの落ちがないよう、研究事務局またはデータセンターと緊密な連絡を欠かさない・・・などの業務について充分理解し、データセンターCRCのみならず、他の参加施設のデータマネージャーとも緊密な連絡をとって、試験を成功に導いてくれる人材の育成は日本の臨床医学を発展させるうえで、必要不可欠なものになってきました。

 現在において社会が求める医学的なエビデンスを産み出す鍵となってきた大規模比較対照試験の成否は、ひとえに医師、看護師をサポートして試験を成功に導いてくれるデータマネージャー/CRCの努力にかかっていると言っても過言ではありません。データマネージャーやCRCのかたがたの臨床研究に対する正確な理解、的確な洞察と適切なデータ収集が、日本のエビデンスのレベルを高め、臨床医学、ひいてはバイオサイエンスというこれからの日本を支えていくべき高付加価値産業を正しく育成していくうえで欠くべからざるものになってきています。

 データマネージャー/CRCの存在価値は年々大きくなってきており、多くの施設において幅広い活躍が期待され、今後の臨床医学研究のなかでますます重要な役割を担っていただくことになるものと確信しています。

 
平成24年5月10日
一般社団法人日本癌治療学会
認定データマネージャー制度委員会
委員長 坂本 純一


資格申請について

  • 11月中旬以降に本ページにてご案内いたします。


スケジュール (2012.05.10)

  • 教育集会及び学術集会時開催のセミナー等


日本癌治療学会認定データマネージャー制度規則 (2009.11.09)


日本癌治療学会認定データマネージャー制度運用細則 (2009.11.09)


 

日本癌治療学会 (Japan Society of Clinical Oncology)